牡鹿半島の手前に広がる渡波・万石浦地区。
ここは内海である万石浦と、外洋に続く石巻湾の漁場をフルに生かした漁業が盛んな地域です。
特に、海苔漁師は16件、牡蠣漁師は43件と、石巻市でもトップクラスの組合員数を誇ります。
万石浦は、北上川からの豊富な鉄分とプランクトンが注ぎ込み、種牡蠣を育てるには最適の場所。
湖のような穏やかな海が広がることから、「牡蠣のゆりかご」とも称されています。
ここで育てた種牡蠣は、北海道や岡山、広島など、日本全国に送られているそうです。
万石浦の特徴のひとつは、干満の変動が大きいということ。
この干満差を利用して、種牡蠣の抑制(弱い種を死滅させる)を行いますが、
干潮時に顔を出す夥しい数の抑制棚は、まるで古代遺跡でも見ているかのよう。
万石浦は水深も浅いため、春先には共同で潮干狩りも行っています。
しかしながら、万石浦で作業をするのは特定のシーズンのみ。
実際は半島へ渡る万石橋の下をくぐり、
外洋へ続く石巻湾に出て牡蠣や海苔の養殖を行います。
万石浦を「静」と現すのであれば、石巻湾はまさに「動」。
一見穏やかに見えても、大きな意思をもったかのような波が強くうねります。
漁師たちは内海を出て、巧みに船を操りながらそれぞれの漁場へ船を走らせるのです。
漁業が盛んなこの地域に、2018年3月にオープンしたのが「TRITON WATANOHA」です。
赤い屋根が目印の2階建ての一軒家。
長期滞在向けに3部屋、短期研修向けに2部屋を完備しています。
玄関には、写真家・平井慶祐さんが撮影した進水式の写真が飾られ、
未来のフィッシャーマンの暮らしを見守ります。
改修を手がけたのは、石巻在住のアーティスト増田さん。
使いやすさはもちろん、機能美にもこだわりがあります。
特徴的なのが、建物中央にあるダイニング。
玄関・廊下側に大きな窓がはめられ、まるでレストランの一角のようなつくりです。
個々のプライベート空間を守りつつ、
一緒に暮らす仲間の存在を感じられるようにという思いが込められています。
地域の海苔漁師や牡蠣漁師のもとへ通うのであれば、自転車で通える好立地。
周辺には、水産加工会社が多く点在します。
半島へ渡る万石橋へは車で5分、
魚市場のある魚町までも車で10分ほど。
シェアハウスのすぐそばには、宮城県漁協石巻湾支所や宮城県水産高校もあるなど、
人々の暮らしとともに漁業があります。
元船乗りという人も多いので、運がよければ壮大な海の冒険話を聞けるかもしれません。
陸・海問わず、新たなフィッシャーマンにとって、住みやすい町といえるでしょう。